大好きな君の。
「あ、憐ちゃん。部活は?」
病室を出て少し歩いたところで憐ちゃんにあった。
憐ちゃんはとても焦ったようで、額に汗をかいている。
「抜けてきた、それより優哉記憶もどったんだって?」
「うん」
「お見舞い来たんじゃないの?もうかえるの?」
憐ちゃんがそう思うのも無理はない。
憐ちゃんは、優哉さんが記憶をなくしたあとのことを忘れてしまったことをきっと知らないんだ。
「もういいの」
「……昨日のこと?」
「もういいんだ……。じゃあ」
何か考えている様子の憐ちゃんの横を通り過ぎる。
さっきの、優哉さんの冷たい顔が頭から離れない。
近づいていく顔と顔。ぶつかる唇。
そのすべてが忘れられない。
思い出すな。忘れろ。忘れろ。忘れろ。
ダッシュで病院を駆け抜ける。
『だれ?』
その言葉が酷く頭に響いた。
何度も何度も繰り返される。
優哉さん、あなたはいまどこにいるんですか?