茉莉花の少女
 そして、やっと一息吐く。

 窓を開けておくのは、万が一彼女が帰宅してもその匂いがこもらないようにするためだった。

 吐き気を誘うためにあるかのような強い香水の香りや化粧品の匂い。

 全てが嫌悪感を刺激するものでしかなかった。

 その匂いが彼女の存在の全てであり、大嫌いだった。

 そして、その彼女に面影がある自分の顔も嫌いだった。

 見るたびに嫌悪感が増していく。

 だが、その匂いが嫌いになって分かったことがある。

 自分がいかに狡猾で打算的な人間だということだ。
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