茉莉花の少女
「今度はわたしが作ってあげるから」

「作れるのか?」

「大丈夫」

 かなり大雑把なものを作りそうな気がする。

 でも、クッキーなら包丁も使わないし、失敗することもあまりないだろう。

 それに兄がいれば心配することはないのだろう。

 僕が何も言わなかったことが、分かったの合図だと思ったのだろう。

 目を細めて、少しだけ首をかしげた。

 その拍子に彼女の髪の毛が揺れる。

 僕は彼女を見つめていたのに気づき、目をそらす。先ほどの記憶を半ば強引に引っ張り出した。

「変なこと聞いていい?」

 僕は彼女に問いかける。

 彼女は首をかしげて、僕を見る。

「内容次第」

「どうして大学に行かないのかなって気になったから」

「都合が悪くなってしまったの」

 そう言うと、彼女は微笑んだ。少し前に見せた笑顔とは別物の笑顔だ。

 寂しそうな笑顔は、それ以上聞かれることを拒んでいるように見えた。

 無神経なことを聞いたのだろうか。
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