茉莉花の少女
 しかし。

 顔をあげるとうれしそうな笑顔を浮かべている彼女がいた。

 さっきのこともあって、本当のことを言っていいのか分からない。

 最大限にとりあえず、ほめることを試みることにした。

 めんどうだけど、自分で蒔いた種だ。

「香りが強くて」

 強いはちょっとまずいか。

 香りが何だろう。

「あまり好みじゃなかったかな?」

 彼女は笑顔のままそう聞いてきた。

「どうして?」

「そう顔に書いてあるから。気を遣わせてごめんね」
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