茉莉花の少女
 一瞬、彼女の姿に目を奪われそうになっていたことに気づく。

 違和感を覚えつつ、彼女に聞く。

「これ、どんなお茶?」

「ジャスミンティ」

「名前は聞いたことあるかも」

 彼女は自分の分のお茶を飲み干すと、僕が持っていたカップを取り上げた。

「新しいお茶を入れてくるね。変なことをしてごめんなさい」

「いいよ。飲む」

 なんとなく、そんな気分になっていた。

 目を瞑って、それを一気に飲み干した。

 程よい香りが口の中に広がる、といったような生易しいものではなくて、一気に増殖したような感じだ。
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