茉莉花の少女
 そこに入っていたのは、かぎなれた匂いの紅茶だった。

「入れてきてくれたの?」

 暗かった彼女の声が一気に明るくなる。 

「お前の趣味につきあえるのは秋人くらいなんだから、他のやつに無理強いするなよ」


 秋人……?


 聞きなれない名前に首をかしげる。

「気をつけます」

 彼女もその秋人には触れずに、兄の言葉に明るい調子で答える。

 彼女の友人なのだろうか。

 その正体が気になり、後姿をただ眺めていた。
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