茉莉花の少女
 あの匂いを思い出し、胃の辺りがむかむかする。

「どうして?」

「なんとなく。あそこに戻ってくるとは思わなかった」

「先輩だっていたよな?」

「わたしは買い物をしていたの。本屋でね。お店を出たら久司君がいたから驚いたよ」

 だから彼女があそこにいたのかと納得した。

 あのとき彼女がいなかったら、電話をかけてこなかっただろう。

「別に」

 言えるわけがない。そんなくだらないこと。

 それに、今考えるべきことはどうやって彼女と顔をあわせずにすむかだ。
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