茉莉花の少女
 父親からのメールが届いていた。

 それは成績を聞くものだった。

 最近は進歩したのかメールで成績を聞いてくる。

 あのくぐもった声を聞かないでいい分、気が楽だった。

「久司君」

 いつもの明るい声だ。

 僕は携帯を閉じると、顔をあげた。

 彼女の茶色の瞳の中に僕が映っている。

「何?」

 普通、受験生なら必死に勉強するはずなのに彼女は相変わらず暢気だった。

「一緒に夏休み旅行に行かない?」
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