茉莉花の少女
 そう思っていたのだが。

 彼女の兄は難しい顔をして、不機嫌そうに見える。

 その隣には笑顔の彼女がいた。

「車でいくことになったけど、いい?」

 不機嫌そうな兄を無視して、彼女は笑顔で語りかける。

 いや。いいんだけどさ。

 兄はそれでいいのだろうか。

 彼女はほとんど気にしないのだろう。笑顔のままだった。

 まるで僕が幻をみているのではないかと思えるほどだ。

 僕が後部座席に乗り込むと、彼女も後をついていきて、「奥につめてほしい」と言い出した。

 戸惑う僕をよそに、彼女は平然とした顔で乗り込み、シートベルトを締めた。
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