茉莉花の少女
 明らかに何かあると告げている。

「先輩?」

 彼女はなぜか無視できなくなったのか、視線を足元に落とす。

 そして、ゆっくりと言葉を発する。

「探し物をしているの」

「何を?」

「木」

「木って、その辺りにいくらでもあるだろう? 焚き火でもするのか?」

 軽い冗談のつもりで言ったのだけど、彼女の目に涙が浮かぶ。

「そうじゃないの」

 元気な声とは程遠い、小さく消え入りそうな声だった。

「悪いって。どんな木?」

「お茶の木がほしいの」

 小さな声で彼女はそう告げる。

 その言葉で連想したのがスーパーなどに売っているお茶だった。

 確かにお茶はあるが、それが木なのか草なのかは考えたことはなかった。

「お茶って緑茶とかのお茶?」

 彼女はうなずいた。

 相変わらず変なことを言い出すとは思うが、彼女の変な行動は今にはじまったことじゃない。

「どうしてもほしい?」

 またうなずく。

「じゃあ、誕生日にあげるよ」
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