茉莉花の少女
「わたしがほしいのはこうやって久司君が一緒に祝ってくれる誕生日だから。それだけで満足なの」

 その彼女の声が優しくて、やけに愛しく感じてしまった。

 そのとき、彼女の髪の毛が揺れる。

 いい香りがした。

 最初に見たときのような、優しくて、甘くて、切ないようなそんな香りだ。

 彼女の背中に手を回していた。

 彼女を自分のものにしてしまいたい。

 そんな気持ちに支配されそうになる。

「どうしたの? 苦しい」

 茉莉は顔をあげると、僕の顔を下から覗く。
< 202 / 362 >

この作品をシェア

pagetop