茉莉花の少女
 そのときあらためて気づく。

 彼女はこんなに綺麗な人だったのだ、と。

 彼女の頬に手を当てる。

 そして、そのまま唇を重ねていた。

 彼女の体が震えるのが分かった。

 けれど、拒むことはしなかったと思う。

 唇を離すと、赤く染まった彼女の顔が目に飛び込んできた。

「びっくりした」

「ごめん。思わず」

「いいよ。初めてのキスがあなたでよかった。なんか、最高のプレゼントかも」

 彼女は僕に絡めていた腕を放すと、僕の頬に手を当てた。

「さっきのは久司君の気持ちだから、今度は私の気持ち」

 そのまま彼女の顔が近づいてきて、僕は目を閉じた。
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