茉莉花の少女
 いつもは家の前でわかれる彼女が今日は途中まで一緒についてくると言い出した。

 僕は彼女の手をそっと握った。彼女もその手を握り返してくれた。

 誰かに触れることにここまで拒否感を覚えなくなっていたのかという驚きもあった。

 それは彼女が特別だったことも、また分かっていた。

 その彼女の手が僕の手からすり抜ける。

 今まであたたかった手につめたい風が吹き仕切る。

 傍らにある木々がゆっくりと揺れていた。

 その風に呼ばれたかのように彼女の足がとまる。

「あそこ、行きたい」

 彼女が指差したのは並木道の奥から姿を覗かせている公園だった。

 池などもあるこの辺りでは少し大きめの公園。
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