茉莉花の少女
 お気楽ともいえる明るい声で、

 朝から顔を覗き込まれたけど、心臓に悪い。

 そこで我に返る。

 どうして僕がここにいるのかということだった。

「茉莉はごはんの準備でもしていろ」

「はーい」

 元気な返事をして、部屋から出て行く。

 僕が眠っていたのは布団だった。

 辺りに物はない。

 僕の家でもない。

 客間か普段使われていない部屋なのだろう。

 優人さんの奥には彼女が出て行って少し隙間のあいている障子が目に映る。

「お前は昨日、茉莉を送ってきたのは覚えているだろう?」

 僕は視線を手前に動かすと、優人さんを見た。
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