茉莉花の少女
 僕は大きく息を吸った。こんなことを言うのは一生で一度だけだろう。

 彼女に抱いた気持ちは二度と誰にも抱かないかもしれない。そんな確信があったからだ。

「また、来年、一緒に見ようよ」

 それは彼女と来年も一緒にいたいと伝えた気持ちだった。

 彼女は目を見開いて僕を見ていた。

 彼女は当然、首を縦に振るのだと思っていた。

 けれど、曖昧に微笑むだけだった。

「一緒に、見れたらいいね」

 そう言った彼女の言葉が蜃気楼のように弱々しく不確かなものだと強く感じていた。
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