茉莉花の少女
「おいしい」

「ありがとう」

 笑顔を浮かべる彼女を見てただ幸せだった。

「この花の花言葉はね、親切っていうんだって。久司君みたいに優しい花なんだね」

 彼女は白のベゴニアを見て、優しく微笑む。

「これは?」

 彼女が探していた茶の花を指差す。

 そこには相変わらず白い花が色づいていた。

「……追憶」

 彼女は小さく消え入りそうな声でそう言った。

 どうして君がそんな顔をしたのか、そのときはよく分からなかった。

 ただ、その理由も聞けないほど、君の目が悲しみに帯びていた。
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