茉莉花の少女
多分、ここは土地が売れ次第、全て掘り返されるのだろう。

「大丈夫だよ」

「でも、窃盗罪でつかまったら困るよね」

 困ったような表情を浮かべている茉莉。

 まじめなのかふまじめなのか分からない。

「この花って株分けできるのか?」

「できるはず」

「それなら、僕が犯人になってやるから」

 きっとこの花は工事と共に土に埋もれてしまうのだろう。

 それなら、ここで持ち帰ったほうが幸せになれるはずだと言いきかせる。

 僕は花を摘むと、彼女に渡した。

「わたしも共犯だね」

 でも、そう言っていた彼女の目はとてもうれしそうで、幸せそうに見えた。

 僕はその花の存在よりも、彼女が笑ってくれたことがただうれしかった。
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