茉莉花の少女
 僕が思い出したのは泣いていた彼女の姿だった。

 彼女があのとき願った奇跡は僕と一緒に誕生日を過ごすことだったのだろうか。

 結婚を覆せないのは分かっていたから。

「本当、悪かったな。あいつは言い出したら聞かないから」

「いえ」

 でも、彼女はそれがなかったら僕に話しかけなかったのかもしれない。

「でも強く言えなかったんだよな。

あいつが理解したなら俺達にはとめる権利はないから」

 あいつとは婚約者の彼のことだろう。

「あの人ってどんな人なんですか?」
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