茉莉花の少女
 そこで言葉を切る。

「久司君がわたしを好きになってくれたとしてもそんなことをすることはできなかった。

結局、どっちつかずで二人とも傷つけてしまったんだと思うから」

 彼女はずっと苦しんできたのだろう。

 僕が彼女に想いを伝えた日から。

 もしかすると、僕と一緒にいるときから、傷ついていたのかもしれない。

 僕が彼女のことを好きにならずに、ただ契約を履行するだけの関係なら彼女は苦しまなかったのかもしれない。

 本当に彼女が以前言ったように無垢でなかったら、自分の好きなようにするだけだろう。

 もしかすると、何の迷いもなく婚約を解消するのかもしれない。
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