茉莉花の少女
第3章 笑顔
 僕の目の前に差し出されたのは青のモノトーンの弁当を入れる袋だった。

 笹岡茉莉は笑顔を浮かべる。

「食べて」

「手作り?」

 彼女は困ったように首をかしげる。

「きっとおいしいよ」

「断られると思わなかったのか」

 契約した日に、手作りの弁当を持ってきているなんて、普通はあり得ない。

 彼女はそんな僕に弁当袋を渡し、隣に座る。

 中にはきちんと箸まで入っている。

 僕は弁当箱を開け、売り物のような弁当に正直驚く。

 とりあえず玉子焼きを箸で一口サイズに切って食べることにした。

 口に運んで、思わず箸を止める。

「もしかしてまずかった? そんなことないと思うけど」

「いや。そんなことはない」

 いつ振りだろう。人が作ってくれたごはんを食べたのは。

 まだ、父親の家にいた頃は彼女は料理をしてくれていた。

 すぐに思い出せるのは、そんな昔の記憶だった。

「おいしい」

「本当に? よかった」

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