茉莉花の少女
第26章 二人の時間
 丁寧にも家まで送ってくれることになった。

「じゃあね、お兄ちゃん」

 茉莉は明るい笑顔を浮かべている。

「ま、楽しんでこいよ」

「ありがとう」

 彼女には明日から会えなくなるということが未だに実感がなかった。

 きっと雪のように彼女の存在はすっと消えてしまうのだろう。

 車が去った後、彼女の手を思わずつかんでいた。

「どうしたの?」

 驚いたように僕を見る。

「何でもないよ」

 彼女の存在が消えないように、ただつかんでいたかった。
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