茉莉花の少女
 なんとなくそれは分かる気がした。

「だから結婚を決めたの。この前も電話がかかってきて、破談にしてもかまわないからって言っていた。

でも、そんなことできるわけもない。わたしの心が弱いせいで多くの人を傷つけた」

「でも、きっと彼と一緒にいると幸せになれると思うよ」

 それは紛れもない本心だった。

 僕と一緒にいたらそれ以上の重荷を背負わせてしまうかもしれないと思ったからだ。

 親がついてくるのは彼だけでない。僕にとってもそうだ。

 あの母親がついてくる。そして、何かあれば父親もついてくるだろう。祖父母も何か言ってくるかもしれない。

 愛情ではなく、自己顕示欲のために。
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