茉莉花の少女
 あっという間に太陽が闇にのみこまれる。

 部屋の中を照らし出していた胸の奥を突くような光もあっという間に消失していた。

 差し込んでくるのはわずかな月明かりと、近隣の家や街頭からこぼれる光だった。

 彼女は心がどこかに持っていかれたようにそんな光をぼんやりと見つめていた。

 僕は息を吐くと、彼女に手を差し伸べる。

 自分から終止符を打ちたかったわけではない。しかし、どちらかが切り出さないといけないことだった。

 今から彼女に声をかけることが別れを示唆することが分かっていてもそうするしかないのだ。

 これ以上誰も傷つかないためにも。

「送っていくよ」
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