茉莉花の少女
 この先の彼女の人生が幸せで満ちていればそれでいい。

 僕にはそれを祈ることしかできないけれど。

 僕は優人さんに茉莉が眠ってしまったとメールを送っておく。

 そうしておけば優人さんは彼女を迎えに来ると思っていた。

 しかし、迎えに来ると思っていた優人さんは迎えに来なかった。





 いつも徹夜をしたら明け方が来るのがやけに遅いのに、その夜だけは早送りをするかのようにあっという間に時間が流れていた。


 僕は闇が太陽に支配されていくのをただ座って眺めていたんだ。

 いつもは人に安らぎやぬくもりを与える太陽が希望を打ち砕くものへと変わってしまっていた。

 このまま時が止まればいい。

 もし、そんな願いをかなえてくれるなら確実に願っただろう。

 朝があけないまま、一緒にいられたらどんなに幸せなのか。

 しかし、そのことで傷つく人や困る人がいる。

 それもまた痛いほど分かっていたのだ。
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