茉莉花の少女
 澄んでいた青空が白くくぐもっているように見えた。

 どんなに悲しみに打ちひしがれても明日がやってくる。

 その明日には
彼女の存在がないのに

時間だけは立ち止まってくれなかった。

「久司」

 僕はその言葉に振り返る。

 そこに立っていたのは奈良だった。

「先輩のこと聞いたよ」

「茉莉から?」

 彼はうなずく。

「今だから白状するけど、先輩がお前に告白する前、相談されたんだよね。お前に彼女がいるのかとかいろいろ聞かれた」
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