茉莉花の少女
 奥に通されると、祖父母が入ってくる。

 彼らを見て、老けたなと感じていた。

 あれだけ鬼のように見えた祖母が意外と小さかったことに気づいた。

 祖父はあまり変わらない。いつも祖母の機嫌を伺ってばかりだった。

 祖母の視線が祖父に送られる。彼はその視線に促されたように口を開く。

「ここで暮らさないか?」

 テレビドラマなどではそれが感動的な音楽とともに流されるシーンなのかもしれない。

 しかし、そんなことはなかった。

 決して、それが彼らが僕を認めてくれたとは思えない。

 そんな単純な人間でもない。

 でも、僕には目的があった。

 それにはこの家に住んだほうがいいくらい分かっていた。

 少なくとも生活に困ることはないだろう。

 以前のように母親に煩わされることもないだろう。
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