茉莉花の少女
 茉莉の家に行くと、茉莉の部屋に通された。

 そこに入り、思わず声を出した。

 昨年花がついていなかったあの木に茉莉花の花がやさしくともっていた。

 まるであのときの茉莉の望みをかなえるかのように。

「あとの花はあいつが持っていったんだけど、これだけは残していって、できれば花が咲くように管理していてほしいって頼まれてさ」

 神様が与えてくれた気まぐれだろう。

 動き出した人生を止めることはできない。

 それでも僕の目から涙がこぼれるのが分かった。
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