茉莉花の少女
 彼女の幸せを強く願っていたはずなにに、ただ子供のように泣いていた。

 悲しかったのか、うれしかったのかは分からない。

 ただ、あのとき、彼女に抱きしめられて泣いたときのことを思い出していた。

 全てを包み込んでくれた彼女のぬくもりを思い出していたのだ。

「お前はお前の人生を歩めばいい。自分のことは忘れてくれって言っていたよ」

 茉莉がそう言っていたのだろう。

 僕はその言葉に唇を噛み締める。

「そうですね」

 そんなことはできない。

 そう分かっていて、彼の言葉にうなずくことしかできなかった。
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