茉莉花の少女
 家に帰る途中、僕は足を止めた。

 そこは彼女の誕生日に一緒に過ごした並木道だった。

 まだ燃えるような明るさを残している葉に白いものが触れた。

「雪、か」

 その雪は僕の頬にも触れる。けれど、それは痕跡を残しただけで姿を消してしまった。

 あのとき茉莉があっという間に姿を消してしまったように。

 冷たさだけを残して。

 しかし、肩に舞い降りた雪は消えることなくとどまり続けていた。

 自然と、僕の目から涙が溢れるのが分かった。

 人前で泣くことなんてみっともないと分かっている。
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