茉莉花の少女
 あの場所が空き地でなくなったのは今から二年前の出来事だった。

 やっと買い手がついたのだろう。

 看板が下げられ、工事が始まった。

 僕は曲がり角を曲がり、その土地を視界に映し出す。

 その場所にはこじんまりとした店がたたずんでいた。

 そこにできたのは茉莉がいたら喜んで飛び込みそうな花屋だった。

 店頭を鮮やかな花々が飾っている。

 そして、店の傍らにはあの花が咲いていた。

 工事が始まると、あの花はなくなるものだと思っていた。

 本来はその予定だったのだろう。

 しかし、この土地にできるのは花屋だったからか分からないが、工事後に以前より数は少ないものの茉莉花が再び同じ場所に植えられ、たたずんでいたのだ。
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