茉莉花の少女
「まあ、そうらしいよ」

 茉莉は彼の実家のほうに住むようになったらしい。

 秋人さんが泊まりなどで家をあけることが多いので、防犯の面なので気にしてそういうことになったらしいということは優人さんから聞いていた。

 そのとき彼が会社を継ぐということも視野に入っているとも聞いた。

 しかし、茉莉は小さな会社の社長の娘であっても、社長夫人というのは絶対に合わない気がする。

 どこかで自由奔放に生きているのが僕のイメージする一番彼女らしい姿だった。

「近所にもすごい広い家があるんだよ。久司の家と同じくらい」

 彼女は何かをたくらむように僕を見る。

「で、その家を近くから見たいと?」
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