茉莉花の少女
「そういえばそうね。大きなお腹を抱えていたのは弟さんの奥さんだったのね」

 彼女は納得したように言葉をもらす。

 人の家の前でよくその家の噂ができるとは思ったが、彼女達の話を盗み聞きしていた僕には何もいえない。

 最初に疑問を投げかけた黒髪の女性は首をかしげる。

「会社は?」

「それは別問題でしょう? 結局お兄さんがいたからここまで会社を大きくできたんですから」

 彼が僕と交わした約束が頭を過ぎる。

 何があっても彼女を守る。そして、自分にはその力がある、と。
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