茉莉花の少女
 ついていけない。

「それは先輩が勝手に呼んでいるだけですから」

 結局敬語が一番いいのだろう。

 頬をふくらませ、つまらなそうな顔をする。

 一体何歳なんだよ。



「茉莉」

 試しに呼んでみた。

 彼女は目を輝かせ、僕を見た。

 なんかめんどそうな顔だ。



「笹岡先輩」

 肩を落とす。いじけたような顔だ。

 少しおもしろくなってきた。



「あんた」

 さっきのように頬を膨らませる。


「茉莉先輩」

 ちょっと照れたようなうれしそうな顔。しかし、笑顔とは少し違う。

 他に何か呼び方はないのか。

「あなた」

 突然彼女は肩を震わせ笑い出した。

 何がどう、彼女の笑いのつぼを刺激したのか分からない。

「君」

 ちょっといまいちなのか首をかしげる。

 しかし、そうでもなかったのかまんざらでもなさそうだった。

 これと対照的な顔をしたのはどんな呼び方だろうか。

 僕がそう考えたときだ。

 彼女は腰に手を当て、僕を睨む。
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