茉莉花の少女
「わたしで遊ばないでよ」

「気づくの遅すぎ」

「分かった。そんなにわたしで遊ぶなら、今度からひーちゃんって呼ぶから」

 ひーちゃんなんて幼稚園のときでさえ呼ばれたこともない。

 呼んでもそれくらいの歳までの呼び名だろう。

「何歳だと思っているんだよ」

「十六、七でしょう?」

「分かっているならそんなんで呼ぶなよ」

「だから呼ぶのよ。こういうのは呼ぶよりも呼ばれたほうが恥ずかしいのよ。

それにわたしは女。あなたは男だから」


 意味が分からない。ただ、彼女が何を言おうとしたのかは分かった。

 こういうのは女のほうが白い目で見られないということだろう。

 かなり計算高いのか、ただ変なのかよく分からない。

 いや、変なことに間違いはないか。

「分かったって」

 そう言ったのは逆らうと面倒そうだったから。

 彼女は満足そうな笑顔を浮かべている。

 そういう笑顔を浮かべていると普通にかわいいのに、中身はかなりの問題児だ。
< 42 / 362 >

この作品をシェア

pagetop