茉莉花の少女
 けれど、人はそういうものなのかもしれない。

 僕もそう言われ続けてきた。

 彼女は顔を覗き込んできた。

「アイス食べない?」

「まだ四月だよ」

「スーパーに行けば売っているよ」
 
 そう言うと足早に歩いていく。振り返ることもしない。

 ついてこいということなのだろうか。

 確かに一緒に帰るとは言ったが、こんなことは勘弁してほしいとは思う。

 しかし、小さくなっていく彼女を見過ごせずに後を追うことにした。

 彼女の足は小さなお店の前で止まる。

 そこにはクレープやソフトクリーム、パフェなどがガラスの向こうに並んでいた。

 その甘いものをじっと見つめている。

 彼女の視線が僕を見て、再びこの店に向かう。

 他に食べたいものを見つけたのだろう。

「寄りたいなら寄ってもいいよ」

 そう言わないと彼女が動かないと思ったからだ。

 彼女の茶色の瞳が光を帯びる。

 すぐに顔に出る彼女を見ていると、少しおもしろくもある。
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