茉莉花の少女
 しかし、昼も食べたくせに何でそんなに食べられるんだろう。

「あなたは何を食べたい?」

「コーヒーだけでいいよ」

「そうなんだ」

 またメニューに視線を戻す。

 しかし、やけに人の視線を感じる。

 人の視線を感じることは多かったが、その視線が僕に向いているわけではないことはすぐに分かる。

 目の前の彼女に向けられているのだ。

 彼女はうれしそうにメニューを見ていた。

 絶対に気づいていないと思うほどマイペースな表情を浮かべている。

 彼女は派手なわけではないが、とにかく目立つのだろう。

 辺りを見渡すと、男だけではなく、二十代ほどに見える女性や、他校の女子生徒が彼女をちらちらと見ているのが印象的だった。

 それもかなり好意的な視線を向けている。

 女って自分よりかわいかったり、綺麗なタイプを嫌うのかと思っていたらそうでないらしい。

 彼女といると変な経験ばかりだ。

 一番変なのはこんな視線に気づかず、デザートの写真をうれしそうな目で見ている彼女で間違いないだろうけど。
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