茉莉花の少女
 女の子は涙をぬぐっているのか、手をしきりに動かしている。

 男の子はその手を引っ張っている。

「兄妹かな。それとも幼馴染かな」

 彼女は自分が見ているものを暗示するような言葉を告げた。

 その落ち着いた台詞がいつもの明るい彼女の声とは違って聞こえた。

「さあ、本人じゃないから知らない」

「予想でどちらだと思う?」

「そんな答えの分からないものに興味はないよ」


 そういって顔を背けた。


「そっかな。想像するだけで楽しいと思うけど」

「楽しくない」

「変なの」

 変なのはどっちかと言いたくなる。

 人をあれこれ見て、想像したってくだらないし、無意味だ。

 人は誰でも言えないものを抱えているのだから。

 そんなものに想いを馳せても意味がないことを知っているから。

「明日の朝、この交差点で待ち合わせをしようよ」


 彼女の言葉を聞くのも面倒になって曖昧に答えた。
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