茉莉花の少女
そう言われるので綺麗なのかもしれないが、よく分からない。
ただ、そんな彼女がたまに睫毛に黒いものを塗り、赤い唇がより赤くなる口紅を塗ったとき、恐怖を感じた。
そんな母親は香水が好きで、いろんな香水を男に買ってもらっていた。
母親の大好きな香水の匂いが嫌いでたまらなかったのだ。
僕の父親は傍目には地味でまじめな人だった。
彼の周りに母親に比べると異性の影はあまりなかったように思う。
実際そうでなかったみたいだが、それはまた別のことだった。
母親がどうして父親を選んだのか不思議に思っていたのかもしれない。
幼稚園の頃、そんなことを友達の親が言っていた。
しかし、彼は大きな土地と広い家を持っていた。
それにセットになるように口うるさい祖父母もついていきた。
その財産を狙っていたのだろう。
あの女は。
そして、そのために子供を作り、父親の財産を自らの手の内に入れようとしたのだろう。
けれど、そんな浅はかな目論見はあっけなく崩れたようだった。