茉莉花の少女
「彼女が勝手に登録していた」

 三田は羨ましそうに僕を見ている。

「俺の携帯にも勝手に登録してくれないかな。毎日でも電話をかけるから」

 絶対にこいつには教えないだろうな。

 そんなことをされたら迷惑なだけだ。

「電話してみたら? まさかまだ交差点にはいないと思うけど」

 そう言ったのは奈良の声。そのとき、教室の扉が開き、数人がなだれこむように入ってきた。


 僕は外に出ると、電話をした。

 何度鳴らしても、彼女は出ない。しばらく経つと留守電に切り替わる。

 別にあの女がどうしようと、どうでもいいんだけど、一応約束は守らないと気分が悪い。

 そのまま学校を出ることにした。

 階段をおりようとしたとき、数学の教師とすれちがう。

「藤木。お前、補習をどうする気だ」

「すみません。ちょっと教科書を忘れてしまって」

 そのまま階段をかけおりる。

 途中、補習に遅れてくるクラスメイトともすれ違ったが、彼らを気に留める気にもならなかった。

 靴箱についたとき、チャイムが鳴り響く。

 これで完璧に補習をサボることになってしまった。

 しかし、一息ついている間もなく、とりあえず学校の外に出るのが先決だ。
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