茉莉花の少女
「そんなところに置きっぱなしにしていたら危ないですよ」

「大丈夫よ。人気がないし」

 夜中でも人気ないから大丈夫とか言ってその辺りをうろついていたりしないだろうな。

 そんな不安が過ぎる。

 しかし、これ以上、彼女の主張を聞く気にもならない。

 僕は彼女の手をつかむ。

「早く学校に行きましょうって」

「今、何時?」

「八時です」

 彼女は驚いたような声を出した。

「そういえばどうして久司君は朝、来なかったの?」

「まさかこんなところにいるとは思いませんでしたから」

 てっきり帰るときだけだと思っていたのだ。

 彼女は鞄のところまで行くと、息を吐いた。

 そして、鞄をつかんだが、すぐにもとの位置に戻した。

「学校に行くのが面倒になってきたね」

 放っておくとこのまま学校に行く気がなくなったとでも言い出しそうだった。

「先輩。だいたい三年なら受験生でしょう。そんなんでいいんですか?」

「いいのよ。成績はいいし。それに大学行くか分からないの」
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