茉莉花の少女
第6章 恋人らしいこと
 もともと父親の両親は母親が財産目当てだと考えていたのだろう。

 祖母が母親を睨みつけていたのをはっきりと覚えている。

「あんたの本当の父親は一体誰なんだろうね」

 そう吐き捨てるように言われたのは幼稚園のとき。

 お父さんと呼ぶ存在が自分の父親だと思っていた。

 彼女はそんな僕を鼻で笑う。

 けれど、疑問に思っていたのは祖母だけではなく、父でさえもそう思っていたようだった。

 誰もいなくなった家の中でそう父親に聞かれたから。

 ただ悲しかった。

 そういわれて、一人だと思った。

 誰も自分の存在を望んでいなかったのだと理解した。


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