茉莉花の少女
「そんなことないし」

「僕は本当の恋人じゃないから、当たっているでしょう?」

「そうなんだけど、いいじゃない」

 彼女は身を乗り出すと、僕をじっと見た。

「そしたら恋人らしいことをしてみる?」

 囁くようにそう僕に告げた。

 一瞬、我を忘れてしまいそうなほど、透明感のある澄んだ声だった。

「しませんって。だいたい、本当の恋人を作ってからしたらいいじゃないですか」

 彼女は笑い出した。

「冗談だよ」

 そう言って、立ち上がる。

 こういうたちの悪い冗談を言うところがなんとも言えない。
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