茉莉花の少女
 そう思っていたのに。

 さっきの台詞はどういう意味なのだろう。

 桜の花びらの舞う中、彼女の残した言葉だった。

「久司?」



 僕は突然、名前を呼ばれて顔を上げた。

 そこに立っていたのは三田だった。

 彼はからかうような顔で僕を見ていた。

「何だよ」

 なんとなく、彼女のことを考えていたのを知られたくなくて、顔を背けた。
< 71 / 362 >

この作品をシェア

pagetop