茉莉花の少女
 父親の家を思い出さなくてすんだのは、この家が洋風の作りだったからだろう。

 そんな僕に突然何かが触れた。

 その感触とともに、目の前で髪の毛が揺れる。綺麗な色をした髪の毛だった。

 彼女が僕に抱きついたのだと気づくまでに時間は要さなかった。

「何するんですか」

 胴体に回された腕を引っ張って引き離そうとしたが、既に抱きついている彼女を引き剥がすのは至難の業だった。

 簡単に言えば、彼女は離れようとしなかったのだ。
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