茉莉花の少女
「だいたい、自分からフリだと言ってきたくせに約束が違うと思いますけど」

 拒んでも離れない彼女に半ば嫌気がさしてきた。

「わたしは約束を破ってもいいのよ」

 そんなことを言ってきた。

 なんて女だよ。全く。

「でも、どうしても離れてほしいなら離れるけど」

「離れてください」

 僕は即答した。

「つまらない」

 僕に回されていた手が離れたときだった。

「茉莉、お前」

 予想していなかった低い声。

 僕が顔をあげると、まず、影が目に入った。
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