こんな世界でも君となら…
フェンスを登りはじめて数分。
やっとフェンスの淵にたどりついた。
屋上の地面からも結構高い。
淵に腰掛けて下を見下ろせば、薄暗い中に
ポツポツと住宅の光が見える。
少し離れた所にはたくさんの車が走っている
大きな道路。
高いビルが立ち並んだ街。
いつもは見上げるだけだった景色も今では
私が見下ろしている。
あんな狭苦しい空間でよく普通に過ごせるなと
流れゆく光を眺めながら思った。
たくさんの人が集まる都会。
ここはその中でも人が少ない地域。
屋上の真下は一様道路だが、車なんてたまにしか通らないし、ましてや歩行者なんてほとんど来ない。
真っ暗な中に街灯が数メートルおきにポツンとあるだけだ。
煌びやかな街とは正反対の
静かで暗いところ。