言葉にできない。
「すみません!」
人の輪の中から、一際背の高い人がこちらに駆けてきた。
見覚えのある濃紺のピンストライプ。
「千鳥!」
「東條さん…」
駆け寄ってくると、千鳥を諭していた男に向かい、頭を下げた。
「すみません、坂下先生。彼女は僕の恋人なんです。」
そう言いながら、自分の背中に千鳥を隠すようにして立たせる。
「へぇ、神野くんの恋人。」
そう言うと、’’坂下先生’’と呼ばれた男はあからさまな表情で東條を見た。