言葉にできない。

「主役が何壁際で佇んでるんですか。行きましょう?」


そう言うと、東條の手を取る。

綺麗な手が東條の手に触れた。

あたしを愛してくれるあの手に、あたし以外の人が触れた・・・。

「あ、いや、僕は」

「東條さん、あたし、帰ります。
楽しんできてくださいね。」

「ちー!」

くるりと向きを変え、会場をを後にする。

駆け抜けるロビーで、東條が何かを叫んでいた。

・・・けれど。

知らん顔をしてタクシーに乗る。

< 125 / 238 >

この作品をシェア

pagetop