言葉にできない。
「主役が何壁際で佇んでるんですか。行きましょう?」
そう言うと、東條の手を取る。
綺麗な手が東條の手に触れた。
あたしを愛してくれるあの手に、あたし以外の人が触れた・・・。
「あ、いや、僕は」
「東條さん、あたし、帰ります。
楽しんできてくださいね。」
「ちー!」
くるりと向きを変え、会場をを後にする。
駆け抜けるロビーで、東條が何かを叫んでいた。
・・・けれど。
知らん顔をしてタクシーに乗る。