言葉にできない。
「あたしの部屋に来るのはいいけど…ベッドじゃないわよ?お布団だし。」

立ち上がりながらそれだけ言う。

「うん、へーき。別にベッドじゃなきゃセックス出来ないおバカさんじゃないからさ。」


誰かこの煩悩まみれの男に制裁を。


「うん、わかった。」

「え、帰るの?」


背中を向けて扉のノブに手をかけていたあたしの手に、大きくて、でも綺麗な手が重なる。


「うん。喰われる前に帰る。」

こんな真っ昼間に何しようって言うの?


「じゃあ、俺がちーの部屋に行く。待って、着替えるから。」

慌ててスエットを脱ぐ東條の後ろ姿をちらりと覗き見る。
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