学芸員の憂鬱

報告書


先日、持ち込まれました十二神将像二体(勾陳・青龍)についての報告。

結論からみて、棚田神社から持ち出され行方不明になっていた二体で間違いないと思います。
棚田神社に十二天将像は元より存在しません。
神具や道具として十二天将ならびに十二支に関係するものを配置する事で十二天将を奉る御神体を持たない神社である。

今回、持ち込まれた二体の像以外のものとして下記の物が置かれています。

騰虵(とうしゃ)巳=蛇革、神具として。
朱雀(すざく)午=神馬。
六合(ろくごう)卯=膠(にかわ)として神具の和弓に使用。
貴人(きじん)丑=太鼓として皮革を使用。
天后(てんこう)亥=皮革、神具の細工部分に使用。
大陰(たいいん)酉=朝告鶏として飼育。
玄武(げんぶ)子=書庫の鼠返し細工(文化財)。
大裳(たいも)未=羊毛糸、供物として。
白虎(びゃっこ)申=棚田神社の紋、百日紅。
天空(てんくう)戌=狛犬。

像二体の勾陳、青龍については像の事も含め以下の通りにご報告させていただきます。

像二体は十二支では辰と寅を表わします。
この二つは実際に飼う事も出来ず、神具や皮革類も手に入れる事も難しく像として二体のみ製作されたと考えます。
なお、二体の紛失後は二体を描いた掛軸を代わりに収めており、相違ない姿が確認出来ます。
勾陳は竜の鱗、尾っぽ、髭を持つ像であり。
現在では紛失していますが、右手に龍涎香を持った姿が掛軸に残されています。

次に青龍ですが、像の作者の勘違いから干支では無く、名前の(青龍)から龍をイメージした形で勾陳と同じ特徴を持つ像になっておりますが、右手に虎狩の縄を持っています。

なお、この像を持ち込んだ亘理家の方は対の物だと認識していた模様です。

棚田神社の宮司に、お話を聞く事が出来ましたが、可能であれば返却を望まれています。

巡 雨衣

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